Excel ビジネス利用における課題と対策 (2)
あらゆるビジネスシーンで威力を発揮するExcelですが,その反面,Excelマクロや関数,VBAを駆使するケースが増え,企業の各部門にExcelの専門家が誕生するようになりました。前回は「超絶技巧Excelマンの登場」と題して,その結果,困った事態に陥るケースをご紹介しました。
今回のテーマは,
(2) 言うは易く行うは難し「スプレッドシート統制」です。
静かな話題になっている「スプレッドシート統制」(以下,指針という)について,考えてみます。
皆さんは「スプレッドシート統制」をお聞きになったことがありますか,また,その内容についてご承知でしょうか。北村は非常に重要と思っています。ビジネスでは,ほとんどの場合Excelを使用しますから,「スプレッドシート統制」は「Excel統制」と,読み替えて差支えありません。この指針の正式タイトル名は「企業の経理財務業務におけるスプレッドシート管理指針」,副題として(スプレッドシート利用のための規定と管理モデル)と謳っています。
まとめたのは,エヌ・ティ・ティ・ビジネスアソシエ株式会社,新日本監査法人,マイクロソフト株式会社,日本CFO協会です。つまりJ-SOX法の考え方に基づいて,企業の内部統制の視点から Excel利用を,これまでのように野放図に放置してはおけない,管理が必要としたものです。その要点を纏めてみます。
指針を発行した目的
企業の経理財務業務で使用されるExcelに対して,正確性と信頼性を確保することが目的です。つまり,経理および財務報告の業務ツールとして,多くの企業でExcelが利用されていますが,このExcelも内部統制の対象となるのです。しかし多くの企業では,Excelの利用実態を把握・管理しきれていない。そのためExcel利用による,経理財務上のリスクを低減するため,全社的にExcelの利用ルールを整備・徹底することが必要,このガイドラインは,そのように主張しています。
そして,指針の対象
対象となるExcel利用については,金額的重要性と機能的複雑性の両面から,経理財務上の影響度を評価して,どちらか一方でも大きいと判断した場合は,統制の対象にすべきといっています。この意味は分かるし,また反論しようとも思いませんが,全てのExcelを整理して分類できるか,現実問題として疑問が残ります。
また,Excelのリスクとは
経理財務業務で使用されるExcelには,誤謬や不正が原因となって,数値や情報を歪めるリスクがあります。しかも,通常のコンピュータシステムと,同等のITリスクが存在し得ます。つまり,システムの開発と運用・変更が正しく管理され得ないこと,およびプログラムとデータが正しく管理されないことです。経理財務業務では,こうしたExcelに纏わるリスクをコントロールしない限り,Excelの正確性や信頼性を担保できないと言い切っています。
そして,Excel管理ルールの制定
「指針」では以下の7項からなるExcel利用規定を定めています。
・入力管理規定
入力データについては,正確性,網羅性(漏れがないこと),実在性(元データの存在)を,第三者によって確認されていること。
・出力管理規定
出力結果については,第三者によってExcel結果が検算されていること。
・設計変更管理規定
Excelの新規作成および変更が,正しく申請・承認されており,テスト,変更の履歴が保持されていること。
・アクセス管理規定
正当な権限を持つ者だけがそのExcelを使用できること,またはパスワードが設定されていること,正しいバージョンが使用されていること。
・バックアップ管理規定
定期的にExcelのバックアップが行われ,短時間で復元できる仕組みが整備されていること。
・関連文書管理規定
Excel設計,操作に関する情報が保持されていること。また,これらの個別規定が正しく運用されるために,全体規定を定める。
・管理証跡保持規定
各利用規定で確認された事項は、文書または電子的に証跡として保持されていることを確認する。
さて,皆さんの会社では,この指針に準拠したExcel運用ルールの作成と,それを遵守ができるでしょうか。
北村は,まさに「言うは易し,行うは難し」の典型と思います。ルールというものは,それを守れる仕組みが重要ではないでしょうか。
次回は,Excelのビジネス利用における課題と対策 (3)
「ビジネスで利用する場合のExcelの致命的欠陥」について,お話しします。ご期待ください。
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